Date:2025.06.10

みんなで支える釧路の医療

多職種連携で実現する、自分らしい暮らし

特定非営利活動法人CCLは、「人を括り、組織を括り、地域を括り、自分らしく生きるを支える」活動を行っています。今回は、私たちが暮らす地域において、様々な専門家が連携して医療やケアを提供する「多職種連携」について、その重要性や現状、課題、そして今後の展望を、一般の皆さんにも分かりやすくご紹介します。

1. 多職種連携って何?

皆さんは、病院の先生、看護師さん、薬局の薬剤師さん、介護施設の職員さんなど、色々な専門職の方々にお世話になることがあると思います。多職種連携とは、これらの様々な専門職が、それぞれの知識や技術を活かしながら、患者さんや利用者さんのために協力し合うことです。

例えば、高齢の方が自宅で安心して暮らすためには、お医者さんの診察だけでなく、看護師さんの訪問、薬剤師さんによる薬の説明、ケアマネジャーさんによる生活のサポート、リハビリの専門家による機能訓練など、様々な支援が必要です。これらの専門家が、それぞれの情報を共有し、連携を取りながら、一人ひとりに合ったきめ細やかなケアを提供することが、多職種連携の大きな目的です。

1-1: 地域医療における多職種連携の意義

私たちの住む地域で、多職種連携はますます重要になっています。なぜでしょうか?

  • 高齢化が進んでいる 日本は世界でも有数の高齢化社会です。高齢になると、一つの病気だけでなく、色々な健康上の問題を抱えることが多くなります。そのため、一人の専門家だけでは対応が難しく、様々な専門家が協力する必要があるのです。
  • 病気だけでなく、生活全体のサポートが必要 病気の治療だけでなく、その人が住み慣れた地域で、自分らしく安心して生活を送るためには、医療、介護、生活支援など、様々な面からのサポートが大切です。
  • 「地域包括ケアシステム」 厚生労働省は、「地域包括ケアシステム」という、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるように、医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に提供する仕組みづくりを進めています。このシステムを実現するためには、様々な専門職が連携することが不可欠です。

1-2: 厚生労働省も推進

国も、高齢化が進む中で、地域全体で医療や介護を支えるために、多職種連携を積極的に進めています。病院での治療が終わった後も、安心して自宅で療養できるような体制づくりや、医療の質を高め、より効率的なサービス提供のために、多職種連携は重要な役割を果たすと考えられています。

1-3: 多職種連携が求められる背景と課題

なぜ今、多職種連携がこんなにも求められているのでしょうか?

  • 病気の種類の変化 以前は、急な病気が中心でしたが、今は高血圧や糖尿病などの慢性的な病気を持つ人が増えています。これらの病気は、治療だけでなく、日々の生活習慣の改善や、長期的なサポートが必要です。
  • 患者さんのニーズの複雑化 高齢になると、病気だけでなく、経済的な問題や、家族の介護の負担、一人暮らしの寂しさなど、様々な悩みを抱えることがあります。これらの問題に対応するためには、医療、介護、福祉など、色々な分野の専門家が連携して支援する必要があります。
  • 医療資源の制約 医師や看護師などの医療従事者が不足している地域もあります。限られた資源を有効に活用するためにも、多職種が連携し、それぞれの専門性を活かして効率的に業務を行うことが求められています。

しかし、多職種連携には、まだ課題もあります。例えば、専門家同士が情報を共有する際に、言葉が通じにくかったり、忙しくてなかなか顔を合わせて話し合う時間が取れなかったり、誰が何をするのか役割分担が曖昧だったりすることがあります。これらの課題を乗り越えて、より良い連携を実現していく必要があります。

2. 多職種連携のメリット

多職種連携が進むと、患者さんやご家族にとって、どんないいことがあるのでしょうか?

  • 一人ひとりに合った、きめ細かいサポート 様々な専門家がそれぞれの視点から患者さんの状態を把握し、情報を共有することで、その人に本当に必要なケアを提供することができます。
  • 病気や治療に関する不安の軽減 複数の専門家から、病気や治療について分かりやすく説明を受けることができ、疑問や不安を解消しやすくなります。
  • スムーズな在宅療養への移行 病院での治療が終わった後も、地域の医療機関や介護サービスと連携することで、安心して自宅での療養生活を送ることができます。
  • 医療・介護サービスの質の向上 それぞれの専門家が持つ知識や技術を出し合い、協力することで、より質の高い、包括的なケアを提供することができます。
具体的な連携事例
  • 退院支援 入院していた方が自宅に戻る際、病院の医師や看護師、地域のケアマネジャー、訪問看護師などが連携して、退院後の生活に必要な準備やサービスを調整します。
  • 認知症ケア 認知症の方を支えるために、医師、ケアマネジャー、介護職員、家族、地域の相談窓口などが連携して、医療的なケア、生活の支援、家族へのサポートなどを検討します。
  • 薬のサポート 複数の薬を飲んでいる方に対して、薬剤師が医師や看護師と連携して、薬の効果や副作用を確認したり、飲みやすいように工夫したりします。

3. 多職種連携の課題と解決策

多職種連携には多くのメリットがある一方で、スムーズに進めるためにはいくつかの課題を克服する必要があります。

課題
  • 情報共有の難しさ 専門家同士が、患者さんの情報をリアルタイムに共有することが難しい場合があります。また、情報の内容や形式が統一されていないと、情報が伝わりにくかったり、必要な情報が見つけにくかったりすることもあります。
  • コミュニケーションの難しさ それぞれの専門分野で使う言葉が違うため、お互いの意図が正確に伝わらないことがあります。また、職種間の立場や考え方の違いから、意見が対立することもあります。忙しさから、ゆっくりと話し合う時間が取れないことも課題です。
  • 役割理解の不足 チームのメンバーが、他の専門職がどのような仕事をしているのか、どんな知識や技術を持っているのかを十分に理解していないことがあります。そのため、連携がうまくいかなかったり、役割分担が曖昧になったりすることがあります。
解決策
  • ICT(情報通信技術)の活用 スマートフォンやタブレットを使って、安全に情報を共有できるシステムを導入することで、時間や場所にとらわれずに、必要な情報を迅速に共有できるようになります。
  • コミュニケーションの機会を増やす 定期的に会議を開いたり、合同で研修を行ったりすることで、顔を合わせて話し合う機会を増やし、お互いの理解を深めることができます。
  • お互いの専門性を尊重する それぞれの専門職が、自分の専門分野だけでなく、他の専門分野についても理解を深めることで、より円滑なコミュニケーションが可能になります。
  • 役割分担を明確にする チームの中で、誰が何を担当するのかを明確にすることで、業務の重複を防ぎ、スムーズな連携につながります。

4. これからの多職種連携

高齢化がさらに進む中で、多職種連携はますます重要になっていきます。今後は、テクノロジーの進化を活用したり、地域全体で支え合う仕組みを強化したりすることで、より質の高い、患者さん中心の医療・ケアが実現されることが期待されます。

私たちCCLも、「人を括り、組織を括り、地域を括り、自分らしく生きるを支える」という理念のもと、多職種連携を推進し、地域の皆様が安心して、自分らしく生活できる社会の実現に貢献していきたいと考えています。

多職種連携は、地域の医療をより良くするための大切な取り組みです。患者さんやご家族が安心して生活できるよう、様々な専門家が協力し、それぞれの専門性を活かしてサポートしていくことが、これからの地域医療には不可欠です。