Date:2025.05.25
深刻化する人材不足とケアマネジャーの奮闘、地域連携で挑むCCLの役割
はじめに
豊かな自然に恵まれた釧路市。しかし、日本の多くの地方都市と同様に、急速な高齢化と生産年齢人口の減少という大きな課題に直面しています。地域住民の暮らしを支えるためには、医療・福祉サービスの充実が不可欠ですが、その基盤となる人材の確保が喫緊の課題となっています。
私たち特定非営利活動法人CCL(ククル)は、釧路地域における保健・医療・福祉分野の専門職や関係機関、地域住民が連携し、切れ目のない包括的な支援体制を構築することを目指して設立されました 。その原点は、職種間の連携における課題意識から始まった研修会であり、「本音で語り合える場」の必要性から生まれました 。CCLは「Cooperate(連携する)・Create(創造する)・Live(人生を楽しむ)」の頭文字を冠し、多職種を、組織を、そして地域をひと「括り(くくる)」にして課題解決に取り組むという想いを込めて、「誰もが安心して暮らせる釧路を創造します」というビジョンの実現を目指しています 。
本稿では、釧路市における深刻な「介護人材不足」の問題、特に地域ケアシステムの要でありながら、その負担が増大している「介護支援専門員(ケアマネジャー)」に焦点を当てます。現状を深く掘り下げ、ケアマネジャーへの影響を探り、CCLを含む地域での取り組みを紹介するとともに、地域全体での連携と協働の必要性を訴えます。
第1章 向き合う現実:釧路市で深刻化する介護人材不足
1.1 全国、北海道、そして釧路市の現状
介護人材不足は、日本全国共通の深刻な課題です。全国の介護事業所の約65%が何らかの人材不足を感じており、特に深刻な不足を感じている事業所も34%に上ります 。厚生労働省の推計(2021年発表)によれば、2年後には約22万人の介護職員が不足するとされ 、2040年度には不足数が約57万人に達するとの予測もあります 。社会福祉関連職種の有効求人倍率は全産業平均を大きく上回り続けており 、介護人材への需要がいかに高いかがうかがえます。一方で、全国的な離職率は2023年度に13.1%と、近年わずかに低下傾向にあるものの 、依然として人材確保は大きな課題です。
北海道に目を向けると、状況はさらに厳しさを増します。2025年には1万人以上の介護職員が不足すると予測されており 、これは全国平均と比較しても、高齢化と人口減少が急速に進む北海道特有の課題を反映しています 。北海道の介護職の有効求人倍率は2019年時点で3.34倍と、全国平均よりは低いものの依然として高い水準です 。また、将来的な介護人材の充足率予測においても、北海道は他の都府県と比較して低い水準に留まる可能性が示唆されています 。さらに、求人が札幌市などの都市部に集中する傾向 は、釧路市のような地方都市における人材確保の困難さを増幅させる要因となり得ます。
そして、私たちの足元である釧路市においても、この問題は極めて深刻です。CCLが実施した「釧路の医療・介護の未来を考えるアンケート調査」では、医療従事者、介護従事者、行政関係者など、地域の関係者から「深刻な人材不足」が最重要課題の一つとして明確に指摘されました 。これは、医師や看護師だけでなく、介護福祉士を含む介護現場全体の問題として認識されています。実際に、人手不足を理由に町内のデイケア事業所が閉鎖され、住民が必要なサービスを受けられなくなる事例も報告されています 。釧路市の第9期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(以下、第9期計画)においても、生産年齢人口の減少に伴い、人材確保が一層困難になることが認識されています 。
全国的な離職率の微減といったデータ が示す傾向とは裏腹に、将来的な需要の大幅な増加予測 、北海道特有の急速な人口構造の変化 、そして釧路地域で現に報告されている深刻な不足感 を考慮すると、地域の実感としては人材不足の圧力はむしろ増していると考えられます。供給と需要のギャップは拡大し続けており、状況は予断を許しません。
1.2 不足の背景:なぜ釧路市で人材が集まらないのか?
釧路市における介護人材不足の背景には、複合的な要因が存在します。
- 人口構造の変化: 全国的な傾向と同様に、高齢化の進展による介護サービス需要の増大と、少子化による労働力人口の減少が根本的な原因です 。
- 経済的要因: 介護職員の賃金水準の低さは、依然として大きな課題です。社会保険・社会福祉・介護事業の平均現金給与額は、全産業平均や他の専門職と比較して低い水準にあります 。収入の少なさは、介護職を離れる主要な理由の一つとして挙げられており 、人材確保を困難にする大きな要因となっています 。
- 労働環境とイメージ: 「きつい、汚い、危険」といった、いわゆる「3K」のイメージ や、実際の労働環境の厳しさも人材確保を妨げています。職場の人間関係は、定着率向上の最大の要因である一方 、離職の主要な理由ともなっており 、職場内での対立や利用者からのハラスメントに悩む声も聞かれます 。特に地方部では、実習機会の限定 など、若年層の人材育成・確保が社会問題とも言える状況にあります 。
- 採用の困難: 多くの介護事業所が、人材不足の理由として「採用が困難である」ことを挙げています 。従来の募集方法に加え、近年はインターネット等を活用した採用活動へのシフトも見られますが 、根本的な人材不足の解消には至っていません。
これらの要因は独立しているのではなく、相互に関連し合い、負のスパイラルを生み出しています。例えば、低い賃金水準 と厳しい労働条件 は、新規採用を困難にします 。その結果、既存の職員一人ひとりへの負担が増大し、労働環境がさらに悪化、離職者が増加するという悪循環に陥りやすくなります。この連鎖が、人材不足問題をより根深く、解決困難なものにしています。
1.3 地域への波及効果:釧路市のコミュニティとサービスへの影響
介護人材不足は、単に介護業界内の問題に留まらず、釧路市の地域社会全体に深刻な影響を及ぼします。
- サービスの利用制限: 人手不足は、訪問介護やデイサービスなどの提供体制縮小や、最悪の場合、事業所の閉鎖につながる可能性があります 。これにより、介護を必要とする住民やその家族が、必要なサービスを十分に受けられなくなる事態が生じます。CCLの調査でも、今後のサービス提供体制に対する不安の声が寄せられています 。
- ケアの質の低下懸念: スタッフ不足は、現場の負担増を通じて、ケアの質の低下を招く恐れがあります。十分な人員体制が確保できない状況では、一人ひとりの利用者に対して丁寧なケアを提供することが困難になりかねません。この点は、CCLのアンケート調査でも課題として浮き彫りになっています 。また、経験の浅いスタッフや短期的な雇用形態への依存度が高まることによる質の低下を懸念する声もあります 。
- 地域経済への影響: 介護サービスの縮小は、地域住民の生活基盤を揺るがすだけでなく、地域経済全体にも影響を与えかねません。介護関連産業の停滞は、雇用の喪失や関連産業への波及効果を通じて、地域経済の活力を削ぐ可能性があります 。
第2章 介護支援専門員(ケアマネジャー):重圧にさらされる地域ケアの要
2.1 地域ケアにおけるケアマネジャーの重要な役割
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、介護保険制度の下で、要介護・要支援認定を受けた方々が適切なサービスを利用できるよう支援する専門職です 。その中心的な役割は、利用者一人ひとりの心身の状況や希望を踏まえ、自立した日常生活を支援するための「ケアプラン(居宅サービス計画書等)」を作成・管理することにあります 。
ケアマネジャーの業務は多岐にわたります。利用者の状況を把握するためのアセスメント(課題分析)、ケアプランの作成と定期的な見直し 、訪問介護やデイサービスといった具体的なサービスを提供する事業者との連絡・調整 、サービスが適切に提供されているかのモニタリング(経過観察)、介護給付費の管理 、利用者や家族からの相談対応 、要介護認定の申請代行 、そして医療機関と連携した退院・退所支援 など、その責任範囲は広範です。ケアマネジャーは、利用者と家族、そして多様なサービス提供者や関係機関を結ぶ、地域包括ケアシステムのまさに「要」となる存在です 。また、高齢者虐待の早期発見においても重要な役割を担っています 。ケアマネジャーには、利用者の居宅での生活を支援する「居宅ケアマネジャー」と、介護施設等に勤務する「施設ケアマネジャー」がいます 。
2.2 増幅される負担:人材不足が釧路市のケアマネジャーに与える影響
介護現場全体の人材不足は、ケアマネジャーの業務負担をさらに増大させています。
- 業務量の増大と複雑化: 介護職員が不足すると、利用可能なサービス(特に訪問介護など)を見つけること自体が困難になります。ケアプランに位置付けたサービスが提供できない、あるいは開始が遅れるといった事態が発生し、ケアマネジャーは代替サービスの調整やプランの変更に追われることになります。これは、単なる調整業務の増加に留まらず、利用者のニーズに応えられないという精神的なストレスにも繋がります。ケアマネジャー自身の有効求人倍率も極めて高い水準(2022年12月時点で4.38倍) にあり、需要に対する供給不足が深刻であることを示しています。釧路市内の一部の事業所では、ケアマネジャー一人当たりの担当利用者数が20件台後半から35件に達しており 、過重な負担がかかっている可能性がうかがえます。
- ケアマネジャー自身の確保・定着の課題: ケアマネジャーのなり手不足も深刻化しています。全国的に介護支援専門員実務研修受講試験の受験者数・合格者数が減少傾向にあることが指摘されています 。また、5年ごとの資格更新研修にかかる費用や時間的な負担が大きいことも、ケアマネジャーを目指す上での障壁や、資格更新を機に離職する一因となっているとの声があります 。さらに、近年、介護職員の処遇改善が進む一方で、ケアマネジャーの給与水準がそれに追いついておらず、介護職からケアマネジャーを目指す魅力が相対的に低下しているのではないかという懸念も示されています 。これらの要因が複合的に作用し、ケアマネジャーの確保・定着を困難にしています。
- ケアマネジメントの質への影響: 過重な業務負担は、ケアマネジャーが本来行うべき、利用者一人ひとりに寄り添った丁寧なアセスメントやモニタリング、多職種との連携調整といった業務の質を低下させる可能性があります。釧路市の第9期計画でも「ケアマネジメントの質の向上」が目標として掲げられていますが 、ケアマネジャー自身の余裕がなければ、その実現は困難です。特に、医療・介護連携 など、多職種との協働を推進する役割を担うケアマネジャーの負担増は、地域包括ケアシステム全体の機能低下にも繋がりかねません。
- 釧路市の現場から見える課題: CCLのアンケート調査で明らかになった「医療・介護連携の課題」や「介護サービス提供体制への不安」 は、ケアマネジャーが日々直面している困難さを間接的に示していると言えるでしょう。また、ケアマネジャーが高齢者虐待の発見・通報において重要な役割を果たしている ことは、彼らが日頃から困難なケースやストレスの高い状況に対応していることの裏返しでもあります。事業所の閉鎖等により利用者のサービス確保に奔走する事例 や、市町村境を越えた複雑な調整が必要となる事例 も、ケアマネジャーの負担の重さを物語っています。介護者自身のストレスや体調不良に関する相談 も、多くの場合ケアマネジャーが受け止めており、その精神的な負担も大きいと考えられます。
介護人材不足は、単に直接的な介護サービスの担い手が減るだけでなく、ケアプラン作成とサービス調整というケアマネジャーの根幹業務を著しく困難にしています。利用可能なサービスが限られる中で 、ケアマネジャーの役割は、円滑な「調整役」から、限られた資源をいかに配分するかという困難な「探索・交渉役」へと変質しかねません。これがケアマネジャーのストレスを増大させ、燃え尽きや離職に繋がり 、結果として介護保険制度の根幹を揺るがす事態を招く恐れがあります。
2.3 現場の声:困難の中での献身と支援の必要性
多くのケアマネジャーは、困難な状況下でも、利用者や家族を支えたいという強い使命感を持って職務に従事しています 。自身のケアマネジメントによって利用者の生活が改善された時に、大きなやりがいを感じるといいます 。
しかし、その献身に応えるためには、ケアマネジャーを支える体制の強化が不可欠です。事務負担の軽減、専門性を正当に評価する処遇改善、質の高い研修機会の提供、そして何より、地域社会からの理解と感謝が求められています 。釧路地区介護支援専門員連絡協議会のような組織による研修会や情報交換 は、ケアマネジャー同士の支え合いや資質向上に貢献していますが、より包括的な支援策が必要です。
ケアマネジャーが直面する過重な業務負担、資格更新のプレッシャー、処遇の問題 は、個々のケアマネジャーの努力だけで解決できるものではありません。これらは、介護保険制度全体が抱える構造的な問題の表れであり、特に資源の限られた釧路市のような地域 では、その影響がより顕著に現れます。ケアマネジャーという重要な役割を支えるための研修、報酬、業務支援といった基盤整備が、増大する需要と人材不足という現実に追いついていないことが、根本的な課題と言えるでしょう。
第3章 NPO CCL:より強い釧路のために連携を育む
3.1 私たちの使命:人をつなぎ、解決策を創造する
特定非営利活動法人CCLは、「保健医療福祉事業に関わる地域住民、専門職、機関等と協働して当該事業及び関連する事業等の切れ目のない包括的な支援体制の構築の推進並びに保健医療福祉サービスの進展を図り、もって、誰もが安心して暮らせる地域を創造すること」を目的としています 。その設立は、地域の保健・医療・福祉専門職が集い、「退院支援と地域連携」について本音で語り合う研修会から始まりました。職能団体を基盤とした活動の限界を感じ、有志による自由な組織として「連携(Cooperate)」「創造(Create)」「人生を楽しむ(Live)」を理念に掲げ、多様な関係者を「括る(くくる)」存在となることを目指して歩み始めました 。釧路市中園町に拠点を置き 、将来的には釧路管内全体での連携強化を目指しています 。活動分野は保健・医療・福祉に留まらず、まちづくり、子どもの健全育成、情報化社会、経済活動の活性化など多岐にわたります 。
3.2 釧路市のニーズを理解する:私たちの活動から見えたこと
CCLは、地域の課題を的確に把握し、実効性のある取り組みに繋げるため、積極的な情報収集と分析を行っています。その代表的な活動が「釧路の医療・介護の未来を考えるアンケート調査」です 。この調査からは、本稿で繰り返し触れている「深刻な人材不足」に加え、「医療・介護連携の課題」、「介護サービス提供体制への不安」、「看取りや認知症ケアにおける課題」など、釧路地域が抱える具体的な問題点が浮き彫りになりました 。こうした現場の声を丹念に拾い上げ、分析・共有すること が、地域の実情に即した連携体制を構築するための第一歩であると考えています。
3.3 橋を架ける:多職種連携の推進
CCLの活動の中核は、「職種連携の促進」です 。介護人材不足が深刻化する中で、限られた資源を最大限に活用し、質の高いケアを提供するためには、医師、看護師、ケアマネジャー、リハビリ専門職、介護福祉士、ソーシャルワーカーなど、多様な専門職がそれぞれの専門性を活かし、円滑に連携・協働することが不可欠です。
CCLは、その設立の経緯からもわかるように 、多職種が集う研修会やワークショップの開催 を通じて、顔の見える関係づくりと相互理解の促進を図ってきました。また、釧路・根室権利擁護支援センター や釧路地区介護支援専門員連絡協議会 など、地域の関連団体とも連携し、より広範なネットワーク構築を目指しています。
こうした連携促進の取り組みは、特にケアマネジャーの支援に直結します。多職種間のコミュニケーションが円滑になれば、ケアマネジャーは医療機関との情報共有やサービス調整をよりスムーズに行えるようになり、結果として業務負担の軽減につながる可能性があります。CCLが、医療と介護の情報共有ツールである「つながり手帳」の開発・普及に関わってきたこと も、こうした連携強化に向けた具体的な活動の一例です。
特定の職能団体から独立したNPO法人であるというCCLの成り立ち は、異なる分野や組織(病院、診療所、介護事業所、行政など) の間に存在するかもしれない垣根を越えて、中立的な立場で連携を促進できるという強みをもたらします。資源が限られ、各組織が自身の課題に追われがちな状況において、地域全体の連携強化を使命とするCCLのような存在は、信頼に基づいた対話と共同での問題解決を促す上で、極めて重要な役割を担っていると言えるでしょう。
CCLの活動は、まずアンケート調査等を通じて地域の課題を「見える化」し 、次に研修会や情報共有ツールの活用促進といった具体的な「行動」を通じて 、その課題解決に向けた連携を促すという、戦略的な流れを持っています。これは、地域の実情把握から具体的な解決策の模索・実践へと繋げる、地に足の着いたアプローチであると考えられます。
第4章 前進への道筋:釧路市における解決策と地域活動
4.1 釧路市の取り組み:介護人材の確保・育成・定着に向けて
釧路市は、深刻化する介護人材不足に対応するため、様々な支援策を講じています。
- 介護人材確保支援事業補助金: 市内で介護サービス事業所を運営する事業者を対象に、人材紹介業者等からの採用や外国人介護人材採用にかかる経費の一部を補助します。補助額は対象経費の2分の1で、上限は1人あたり50万円、1法人あたり2名までです。問い合わせ先は釧路市役所介護高齢課介護保険係です。
- 介護人材育成支援事業補助金: 市内事業所の介護職員(就労予定者を含む)、または受講費を負担する市内事業者を対象に、介護職員初任者研修、介護福祉士実務者研修の受講費を補助します。補助額は受講費の全額で、上限は1人あたり10万円です。問い合わせ先は同じく釧路市役所介護高齢課介護保険係です。
- ケアサポーター活用支援事業補助金: 介護助手(地域人材)を雇用する市内介護サービス事業者を対象に、介護職員の負担軽減や地域人材の参入促進のため、介護助手の雇用を支援します。詳細な支援内容については、釧路市役所介護高齢課介護保険係へお問い合わせください。
これらの補助金制度に加えて、市は介護の仕事に関心のある人向けに「介護の職場見学会」の開催 や、就労希望者・事業者双方への情報提供 を行っています。近隣の釧路町 、標茶町 、厚岸町 、浜中町 などでも同様の支援策が展開されており、釧路地域全体で人材確保に取り組む姿勢がうかがえます。
釧路市の第9期計画では、これらの既存事業を継続・検証するとともに、離職理由や事業所の実態把握を通じてより効果的な確保・定着策を検討すること、介護の仕事の魅力発信、多様な人材の参入促進、処遇改善の働きかけなどを進める方針が示されています。
4.2 地域包括ケアシステムの強化に向けて
高齢者が住み慣れた地域で尊厳ある生活を継続できるよう支援する「地域包括ケアシステム」の深化・推進は、釧路市の高齢者施策の根幹です 。
- 地域包括支援センターの機能強化: 地域包括支援センターは、高齢者支援の中核拠点です 。第9期計画では、相談支援体制の充実、民生委員や町内会等との連携強化、地域の実情把握などを通じて、その機能をさらに強化する方針です。
- 医療・介護連携の推進: 医療と介護が必要な高齢者を地域で支えるため、関係機関の連携強化が不可欠です。情報共有ツール「つながり手帳」の活用推進 、多職種研修の開催 、地域ケア会議を通じた課題共有と解決策の検討 などが進められています。CCLも、こうした連携促進の一翼を担っています 。
- 地域ケア会議の活用: 個別ケースの支援検討を通じて、地域共通の課題や必要な資源を明らかにする「地域ケア会議」の効果的な運営を目指します 。個別課題の解決、ネットワーク構築、地域課題の把握、資源開発、政策形成という5つの機能を活かし、多職種の参加を促進することで、高齢者の自立支援に繋げるとしています。
- 生活支援・介護予防の充実: 地域サロン や見守り活動、ボランティア養成 、健康維持・介護予防プログラム(例:「わかがえりレッスン」)などを通じて、高齢者の社会参加促進と健康寿命の延伸を図ります。
- 多様な主体との連携: 行政サービスだけでなく、地域の関係機関、NPO、ボランティア団体、民生委員、自治会など、多様な主体との連携・協働が、地域包括ケアシステムの実現には不可欠です 。
釧路市が様々な支援策を打ち出している にも関わらず、CCLの調査では依然として深刻な人材不足やサービス提供体制への不安が指摘されている ことは、政策の意図と現場での効果との間にギャップが存在する可能性を示唆しています。補助金等の施策だけでは、賃金水準や労働環境といった構造的な問題を解決するには限界があるのかもしれません。施策の周知徹底や利用促進に加え、より踏み込んだ対策の検討が求められます。
4.3 ケアマネジャー支援の強化と地域住民の関与
地域包括ケアシステムの要であるケアマネジャーへの支援強化も重要な課題です。
- ケアマネジャーへの支援策: 釧路市の第9期計画では、困難事例への助言・指導、連絡会や研修会の開催、ケアプラン点検による質の確保、自立支援に資するケアマネジメントの推進などが盛り込まれています 。地域のケアマネジャー連絡協議会による自主的な活動 も、専門性の向上や相互支援に貢献しています。
- 負担軽減策: ケアサポーターの活用促進、ICTや介護ロボット導入支援の検討、国や道と連携した事務負担軽減策の推進などが計画されています。これらは、全国的なケアマネジャーの負担軽減策(管理者兼務要件の緩和、テレワーク推進など) とも連動する動きです。
- CCLの役割と可能性: CCLは、そのネットワークと中立的な立場を活かし、ケアマネジャー支援においても貢献できる可能性があります。例えば、専門分野別の研修やピアサポート(仲間同士の支え合い)の場の提供、ケアマネジャーの業務負担やウェルビーイングに関する調査研究の実施、調査結果に基づく制度改善の提言、医療・行政など他分野との連携促進などが考えられます。
- 地域住民の役割: 介護人材不足やケアマネジャーの負担増は、専門職や行政だけの問題ではありません。地域住民一人ひとりが介護の仕事の重要性を理解し、介護従事者やケアマネジャーへの敬意と感謝を持つことが、働きがいのある環境を作る一助となります。また、地域の見守り活動やボランティア活動への参加 など、できる範囲での協力が、地域全体の支え合いの力を高めます。
人材不足という厳しい現実の中で、地域包括ケアシステムを維持・発展させるためには、「連携」はもはや理想論ではなく、必要不可欠な生存戦略となっています。限られた人的・物的資源を最大限に活かすためには、行政、医療機関、介護事業者、地域包括支援センター、NPO(CCLを含む)、そして地域住民が、それぞれの役割を果たしつつ、効果的に協働していく以外に道はありません。この認識を地域全体で共有し、具体的な行動に移していくことが、喫緊の課題です。
結論
釧路市における介護人材、特にケアマネジャーの不足は、地域全体の喫緊の課題であり、高齢者とその家族の生活、ひいては地域社会の持続可能性に直結する問題です。低い賃金水準、厳しい労働環境、増大する業務負担といった複合的な要因が絡み合い、状況は深刻化しています。
私たち特定非営利活動法人CCLは、この困難な状況に対し、設立の原点である「連携の促進」を通じて貢献していく決意です 。アンケート調査等による現状把握、研修会や情報共有による多職種連携の強化、そして関係機関との協働を通じて、地域包括ケアシステムの深化・推進を支援してまいります。
釧路市による各種支援策 や、地域包括ケアシステム強化に向けた取り組み は重要ですが、それだけでは十分ではありません。この課題を乗り越えるためには、行政、医療・介護専門職、サービス事業者、NPO、そして地域住民一人ひとりが当事者意識を持ち、それぞれの立場で責任を果たし、協力していく「地域総力戦」が必要です。
介護の仕事の価値を社会全体で正しく評価し、魅力ある職業として次世代に繋いでいくこと。ケアマネジャーが専門性を十分に発揮できるよう、負担軽減と支援体制の強化を図ること。そして、多様な主体が連携し、知恵と力を結集して、地域の実情に合った持続可能なケアシステムを構築していくこと。課題は山積していますが、CCLは、関係者の皆様との対話と協働を深め、誰もが安心して暮らせる釧路の未来を創造するために、全力で取り組んでまいります。市民の皆様の深いご理解と温かいご支援、そして積極的なご参加を切にお願い申し上げます。