Date:2025.12.16
「家族がいない場合は?」「書類は必要?」アンケートの“切実な声”から考える、これからの人生会議(ACP)
近年、厚生労働省も普及に力を入れている「人生会議(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)」。
言葉としての認知度は上がってきましたが、現場では「言葉だけが独り歩きしている(プラスチック・ワード化している)」という懸念も聞かれます。
「大切さはわかった。でも、実際どうすればいいの?」 「家族がいない私は、誰と会議すればいいの?」
先日、CCLが開催した市民公開講座のアンケートには、講座で意識が高まったからこそ生まれた、市民の皆様の「切実で具体的な問い」が溢れていました。
今回は、いただいた「生の声」を真正面から受け止め、私たちがこれから取り組むべき課題と解決策について考えます。
疑問1:「話した後、どうすればいいの?」
アンケートの自由記述には、以下のようなご意見がありました。
- 「話し合った後、何か手続きを踏むべきなのか、書類に残すべきなのか、など具体的な手段があるのか気になりました」
- 「全然思っていた内容と違った。ただの映画の宣伝って感じだった。ACPのやり方、こんな事話すといいとかを知りたかった」
- 「実例を元にもっと深掘りしてお話しして頂ければと思いました」
まず、こうした厳しいご意見をいただけたことに感謝いたします。これは、講座によって参加者の関心レベルが「知る(認知)」から「やる(実践)」へと一段階引き上げられた証拠だからです。
【CCLからのアンサー】 ACPに「正解の書類」はありませんが、「話し合いのプロセス」を残すことは大切です。 まずは、エンディングノートのような市販のツールを使ってみるのも一つですが、CCLでは今後、「具体的な書き方」や「対話のきっかけカード」などを使った実践型ワークショップの開催を計画しています。
「映画の話」で心の土壌を耕した今回の講座をステップ1とするなら、次はそこに「具体的な種」を蒔くステップ2の講座が必要です。私たちは、この「知りたい」という渇望に応える準備を進めています。
疑問2:「頼れる家族がいない場合は?」
核家族化や高齢単身世帯が多い釧路において、最も深刻なのが「おひとりさま」の不安です。
- 「伴侶を亡くし、子供や身内には頼れない者が、最期に向かうときの過ごし方を何パターンか知りたいです」
- 「在宅や施設での介護の現状や今後について知りたい」
- 「人生会議」という言葉は、どうしても「家族会議」を連想させますが、話し合う相手は血縁者に限りません。
- 「介護は一人で行わないで、地域や周りを巻き込むことが大事だとわかりました」
この感想をお寄せくださった方が気づかれたように、友人、かかりつけ医、訪問看護師、ケアマネジャー、そして地域の民生委員や私たちNPOスタッフ。これら全ての人が、あなたの「人生会議」のメンバーになり得ます。
【CCLからのアンサー】 「家族がいないからできない」ではなく、「誰になら私の意思を託せるか」を一緒に探しましょう。 CCLは、医療機関や行政と連携し、身寄りのない方でもご本人の意思が尊重される「地域包括ケアシステム」の構築を支援しています。 今後は、独居の方や身寄りのない方に特化したテーマ設定での講座も検討してまいります。
「言葉」を「安心」に変えるために
「人生会議」という言葉を、ただの綺麗なスローガンで終わらせてはいけません。 そこには、一人ひとりの異なる人生があり、異なる不安があります。
特定非営利活動法人CCLの役割は、講座を開いて終わりではなく、そこから生まれた「小さな芽(やってみたいという気持ち)」や「小さな悩み(どうすればいいの?)」を丁寧に拾い上げ、地域全体の力で育てていくことです。
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専門用語を使わない対話の場
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「書き方・手続き」を学ぶ実践教室
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多様な生き方を肯定するネットワーク
これらを組み合わせ、皆様の「不安」を「具体的な安心」に変えていく活動を続けてまいります。 もし、「こんなことが知りたい」「こういう時はどうすれば?」という疑問があれば、ぜひ私たちにお寄せください。皆様の声が、次の講座を作る一番の教科書になります。