Date:2025.12.02

「人生会議」は会議じゃない?98%が共感した、医療や介護の「もっと自由な」話し合い

「人生会議(ACP)」という言葉が広まっていますが、堅苦しい「会議」をイメージしていませんか?先日の市民公開講座のアンケート結果から見えた、手続きや書類よりも大切な「日常の対話」の本質について解説します。

2025年11月16日(日)、ANAクラウンプラザホテル釧路にて開催された市民公開講座「誰かとはじめる、あなたらしい時間のつむぎ方」。日曜日の午前中にもかかわらず、会場には90名もの方にお集まりいただきました。

「在宅医療」や「ACP(人生会議)」というテーマを聞くと、皆様はどのような光景を思い浮かべるでしょうか? 深刻な顔をした専門家が、難しいスライドを読み上げる… もし、そんな「お勉強」の場を想像されていたとしたら、今回の講座はその期待を良い意味で裏切るものとなりました。

今回は、会場を包んだ「笑い」と「熱気」、そしてアンケートから見えた参加者の心の変化について、詳しくレポートします。

「お医者さんの講演で、まさか笑うなんて」

今回講師にお招きしたのは、つるかめ診療所所長の鶴岡優子医師です。「元女優」という異色の経歴を持つ先生ですが、何より参加者を驚かせたのは、その圧倒的な「ユーモア」と「親しみやすさ」でした。

アンケートの自由記述には、これまでの医療講座では見られなかったような感想が多数寄せられています。

  • 「お医者さんの講演会には数多く参加してきましたが、鶴岡先生のような本当に気さくな、ユーモア溢れる内容には衝撃を受けました。かんぴょうの件では声を出して笑いました」
  • 「とにかく先生の話術が素晴らしく、もっと長くても良かったです。釧路にも鶴岡先生ご夫婦のような医師がいてくだされば良いのにと強く思いました」

医療やケアの話、特に「人生の最期」に関わる話は、どうしても身構えてしまいがちです。 しかし、先生の「かんぴょう(干瓢)」にまつわるエピソードトークなどで会場がドッと沸くたびに、参加者の肩の力が抜け、心の扉が開いていくのが手に取るように分かりました。

「楽しいから、話が入ってくる」 「笑えるから、怖くない」 これこそが、CCLが目指していた「日常の延長にある温かい対話」の姿です。

映画が教えてくれた「自分事」への入り口

また、今回の講座の特徴は、映画『いのちの停車場』などのシーンを用いて解説が行われた点です。 「ACP(アドバンス・ケア・プランニング)」という横文字の用語を解説するのではなく、映画の登場人物に感情移入しながら「もし自分だったら?」を考える構成は、多くの共感を呼びました。

  • 「映画のシーンを解説していただいたことが良かったです」
  • 「帰宅後、早速紹介された映画『いのちの停車場』を見ました。まずは自分がこれからどう生きていきたいかを考え、家族や友人と話し合ってみたいと思いました」

このコメントにもある通り、講座の効果はその場限りではありません。 家に帰って映画を見たり、食卓で話題にしたり。そんな「行動変容」が実際に起きていることが、今回の最大の成果です。

「他人事」から「自分事」へ。数字で見る意識の変化

アンケートの集計結果も、この「意識の変化」を明確に示しています。

  • 講座全体の満足度:約98%(よかった・まあまあよかった)

  • 講師の話の分かりやすさ:約85%

そして何より注目すべきは、「今後、家族と話し合ってみたいか?」という問いに対して、85%以上の方が前向きな回答(すぐにでも・機会があれば)を寄せたことです。

「現時点では考えていない」と答えた方はわずか1名。 ほぼ全員が、会場を出る頃には「誰かと話したい」という気持ちをお土産に持ち帰られたのです。

CCLが目指す、これからの「対話」

今回の講座で、「挙手した参加者にお土産を配布する」という演出もありました。 これもまた、一方的な講義ではなく、「会場全体で作る対話の場」にしたかったからです。

私たち特定非営利活動法人CCLは、医療や介護を特別なこととして扱うのではなく、地域の皆様の「暮らし」の中に溶け込ませていきたいと考えています。

「楽しかった」「笑った」「ちょっと安心した」 そんな気持ちで帰れる医療講座を、これからも釧路で作り続けてまいります。 次回の企画も、どうぞご期待ください。