Date:2025.10.10
心に響くメロディー【第1回】お葬式で音楽をかける理由とは?
近年、お葬式の場で音楽が流れることが当たり前になってきました。静粛なイメージのあるお葬式ですが、なぜ音楽が使われるのでしょうか。今回は、お葬式における音楽の役割とその意味について考えてみたいと思います。
故人様を偲び、人柄を伝える
音楽が持つ最も大きな力の一つは、記憶を呼び覚ますことです。故人様が好きだった曲、思い出の曲を流すことで、参列者は生前の故人様の姿や一緒に過ごした時間をありありと思い出すことができます。
「この曲、お父さんがいつも口ずさんでいたな」「旅行の時、車の中でずっと流れていたね」
メロディーと共に蘇る思い出は、何よりの供養になります。また、選ばれた曲は故人様の人柄そのものを伝え、会場を温かい雰囲気で満たしてくれます。
悲しみに寄り添い、心を癒す
大切な人を失ったご遺族の心は、深い悲しみに包まれています。音楽には、そうした心の痛みを和らげ、感情を穏やかに解き放つ力があります。これを「グリーフケア(grief care)」の観点から見ることもできます。
静寂が時に重く感じられる空間で、優しい音楽が流れることで、張り詰めた気持ちが少しだけ和らぐかもしれません。涙を流したい時に、そのきっかけを与えてくれることもあります。音楽は、言葉にならない想いにそっと寄り添ってくれる存在なのです。
式の雰囲気を演出し、空間を繋ぐ
音楽は、お葬式の空間全体に一体感をもたらし、雰囲気を演出する大切な役割も担っています。
- 開式前: 参列者が入場される際に穏やかな音楽を流すことで、心を落ち着け、故人様を偲ぶ準備を整えることができます。
- お焼香・献花: 一人ひとりが故人様と向き合う大切な時間。厳かながらも温かみのある音楽が、そのひとときを深く印象付けます。
- 閉式後: 故人様とのお別れを惜しみながら退場する参列者を、優しい音楽が静かに見送ります。
キリスト教式の賛美歌や、伝統的な葬儀での雅楽のように、古くから音楽は儀式に欠かせないものでした。現代のお葬式で様々な音楽が使われるのは、故人様とご遺族の想いを表現する方法が、より多様になったことの表れと言えるでしょう。
次回は、最近のお葬式の音楽のトレンドや、音楽をかける際に気をつけたい「著作権」について、分かりやすく解説します。