Date:2025.09.15
相続とお墓の承継問題 あなたの家族が直面するかもしれない課題【第1回】
「実家のお墓、この先どうなるんだろう…」
現代社会では、このような漠然とした不安を抱える方が増えています。少子高齢化や核家族化が進む中、伝統的な「家」の概念に基づくお墓の承継が難しくなり、親族間の話し合いが必要となる場面が増えています。
特定非営利活動法人CCLでは、お墓の承継に関する問題について、皆さまがご自身で考えるきっかけとなる情報を提供しています。
この記事では、まずお墓の承継に関する基本的な知識を、あくまで参考情報として、わかりやすくご紹介します。
1. お墓の承継は「相続」とは違う?
財産を巡る「相続」と、お墓を巡る「承継」は、法律上、異なる扱いをされます。
相続財産は、土地や預貯金など、経済的な価値を持つもので、相続人の間で分割されたり、相続税の対象となったりします。
一方、お墓や仏壇、位牌などは「祭祀財産(さいしざいさん)」と呼ばれ、祖先を祀るための特別な財産とされています。この祭祀財産は、以下の点で相続財産とは異なります。
- 遺産分割の対象外: 相続財産のように、複数の相続人で分割されることはありません。
- 相続税の非課税: 祖先供養という目的のため、相続税はかかりません。
- 承継者の義務: 祭祀財産は、原則として1人の「祭祀承継者」がすべて引き継ぎます。
このように、祭祀承継は、単に財産を受け継ぐだけでなく、祖先の供養や管理を続けていくという、責任を伴うものとされています。
2. 祭祀承継者はどうやって決まる?
誰が祭祀承継者になるかは、民法第897条によって、3つの段階で優先順位が定められています。
- 被相続人(故人)の指定 故人が生前に、誰に承継してほしいかを明確に指定していた場合が最も優先されます。遺言書に明記されているのが最も確実ですが、書面や口頭での指定も有効とされています。この指定が、後々の親族間の話し合いをスムーズにする助けになるかもしれません。
- 慣習による決定 故人の指定がない場合、次にその地域の慣習や家族間の話し合いによって決まります。これまでは長男が承継するケースが一般的でしたが、近年は女性や次男以降の兄弟、血縁関係のない方が承継するケースも増えているようです。
- 家庭裁判所の判断 故人の指定も慣習も明らかでなく、親族間の話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の調停・審判によって祭祀承継者が決定されます。裁判所は、故人との関係性や祭祀への意欲、経済状況などを考慮して総合的に判断します。
3. 祭祀承継者が負う役割
祭祀承継者になると、主に以下の役割を担うことになります。
- お墓の維持・管理: お墓の定期的な清掃や手入れ、そして霊園や墓地の管理者へ支払う年間管理料の負担も含まれる場合があります。
- 法要・祭祀の主宰: 一周忌や三回忌などの法要、お盆やお彼岸の供養を主宰する役割があります。
- 檀家としての務め(寺院墓地の場合): 寺院墓地にあるお墓を承継する場合、その寺院の檀家(だんか)としての務めも引き継ぐのが一般的です。お布施や寺院行事への参加といった負担が発生する可能性があります。
これらの役割から「継ぐ人がいない」という問題につながることがあります。次回は、この「継承者問題」を乗り越えるためのヒントや、多様な供養方法についてご紹介します。