Date:2025.08.03
【連載】医療と介護のICT連携:超高齢社会を乗り越えるカギ(1)
はじめに:なぜ今、医療と介護のICT化が重要なのか
日本は今、かつてないスピードで高齢化が進んでいます。2025年には、団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)となる「2025年問題」が到来し、医療や介護を必要とする方が爆発的に増えると予測されています。
これまでの医療は、病気になったら病院で治療を受ける「病院完結型」が中心でした。
しかし、これからは、住み慣れた地域で安心して生活を続けられるよう、医療と介護が連携してサポートする「地域包括ケアシステム」への移行が不可欠です。
高齢化が進むことで、医療や介護の現場では、人材不足や業務負担の増大、医療費の増加といった課題が深刻化しています。
これらの課題を解決し、質の高い医療・介護サービスを提供し続けるために、ICT(情報通信技術)の活用が今、強く求められています。
ICTは、単に業務を効率化するだけでなく、患者さんや利用者さんの満足度を高めたり、地域ごとの医療格格差をなくしたり、さらには新しい治療法の研究開発を加速させたりと、さまざまなメリットをもたらす可能性を秘めています。
特に、在宅医療や介護の現場では、様々な職種が連携してケアを提供しています。
現状では、それぞれの機関や職種が異なるシステムを使っているため、情報共有がスムーズではありません。
このような状況で、ICTは多職種間の連携を円滑にし、切れ目のないケアを実現するための「基盤」となることが期待されています。
「2025年問題」は、日本の社会保障制度の持続可能性と、高齢化社会における国民の生活の質(QOL)に直結する、まさに「国家戦略的な課題」です。
ICTを導入し、医療と介護が連携して効率的に情報を共有できる体制を築くことは、この大きな課題を乗り越えるための重要な一歩なのです。
次回は、実際に医療と介護の現場でどのようにICTが活用されているのか、具体的な事例をご紹介します。