Date:2025.05.04
2040年に向けた介護サービスの未来像 社会保障審議会 介護保険部会での議論
令和7年4月21日、厚生労働省の社会保障審議会 介護保険部会が開催され、2040年を見据えた介護サービス提供体制のあり方について、中間とりまとめに基づいた議論が行われました 。
その内容をわかりやすくご紹介します。
なぜ2040年を見据えるのか?
2040年には、日本の高齢者人口がピークを迎える一方、特に介護や医療のニーズが高い85歳以上の方や、認知症の方、一人暮らしの高齢者の方々が増加すると見込まれています 。同時に、社会を支える現役世代(生産年齢人口)は減少していくため、将来にわたって必要な介護サービスを安定的・効果的に提供できる体制を今から考えていくことが非常に重要です 。
今回の議論では、以下の4つの柱が基本的な考え方として示されました 。
- 地域包括ケアシステムの深化: 住み慣れた地域で、医療・介護・予防・住まい・生活支援を一体的に受けられる体制を、2040年に向けてさらに強化・充実させる 。
- 地域と時間の特性に応じた体制: 高齢化の進展度や人口構成は地域によって大きく異なります。それぞれの地域の実情や、今後の需要の変化(時間軸)に合わせて、最適なサービス提供体制を確保する 。
- 人材確保と働きがいのある環境づくり: 介護人材の確保は最重要課題です。処遇改善はもちろん、働きがいのある職場環境の整備、ICT(情報通信技術)などを活用した生産性の向上、事業所の経営支援を進める 。
- 地域の共通課題解決と地方創生: 介護は、特に地方においては地域の雇用や経済を支える大切な基盤でもあります。人手不足や移動支援など、他の分野とも共通する課題の解決に連携して取り組み、地域全体が元気になる(地方創生)ことを目指す 。
今後の方向性:地域ごとの戦略と共通の取り組み
中間とりまとめでは、地域を主に以下の3つの類型に分け、それぞれの特性に応じたサービス提供体制の方向性が示されました 。
- 中山間・人口減少地域: 高齢者人口やサービス需要が減少していく中で、サービスを維持・確保するための柔軟な対応が重要です 。具体的には、人員配置基準の弾力化、複数のサービス(訪問、通所など)の連携強化や一体的な提供、地域を支える法人への支援などが検討されています。
- 大都市部: サービス需要が急増するため、ICTやAI技術なども活用し、効率的で多様なニーズに応えられるサービス基盤の整備が必要です 。特に、重度の要介護者や一人暮らしの高齢者に対応できる、24時間体制の包括的な在宅サービスなどが検討されています 。
- 一般市等: 今後、サービス需要が増加から減少に転じる可能性がある地域です 。既存の介護資源を有効活用しつつ、将来の需要減少も見据えた計画的なサービス提供体制の確保と、必要に応じた柔軟な対応が求められます 。
これらの地域別の戦略に加え、全ての地域に共通する取り組みとして、以下の点が重要視されています。
- 人材の確保・育成・定着: 処遇改善の継続、多様な人材(外国人材含む)の確保と育成、働きがいのある職場環境(ハラスメント対策含む)、キャリアアップ支援、潜在的有資格者の復職支援など。
- 生産性向上: ICT、見守りセンサー、介護ロボット、介護記録ソフト、AIなどのテクノロジー導入支援、業務の整理・分担(タスクシフト/シェア)、いわゆる介護助手の活用促進。
- 経営支援と連携強化: 事業所の経営状況の見える化と分析、都道府県単位での経営支援体制の構築、事業者間の連携・協働(共同での物品購入や研修実施など)、大規模化のメリット提示と推進。
- 医療と介護の連携強化: 地域の医療機関と介護事業所の情報共有、顔の見える関係づくり、入退院支援、在宅医療の充実、地域医療構想との連携。
- 介護予防・健康づくりの推進: 「通いの場」の充実、多様な主体(高齢者自身を含む)の参加促進、効果的なプログラムの情報提供、市町村への支援強化。
- 認知症施策の推進: 認知症基本法に基づき、本人の意思を尊重し、地域での活躍の場やインフォーマルな支援を含めた包括的な支援体制を構築する。
まとめ
2040年を見据えた介護サービス提供体制の構築は、日本の将来にとって喫緊の課題です。
今後、これらの方向性に基づき、さらに具体的な制度設計や財源確保についての議論が進められていきます 。
私たち特定非営利活動法人CCLとしても、これらの動向を注視し、誰もが安心して暮らせる地域共生社会の実現に向けて貢献していきたいと考えています。