Date:2025.06.01

大切な人を失ったとき、一人で悩まないで。グリーフケアとは

心に残る悲しみと、それを支える「グリーフケア」

人生において、私たちは大切な人を失う経験をすることがあります。
それは、家族、友人、恋人といった人との死別だけでなく、病気による健康の喪失、失恋や離婚による関係性の終わり、仕事や住み慣れた場所を失うことなど、様々な形があります。

これらの喪失体験は、私たちに深い悲しみや喪失感をもたらします。
それは、言葉では言い表せないほどつらい気持ちかもしれません。
もしかしたら、誰にも理解してもらえないと感じ、一人で抱え込んでしまっている方もいるかもしれません。
そんな時、そっと心に寄り添い、悲しみから立ち直るためのサポートをするのが「グリーフケア」です。

グリーフ(悲嘆)とグリーフケア 悲しみに寄り添うということ

「グリーフ(Grief)」とは、大切な何かを失った時に感じる深い悲しみのことです。
それは、単なる一時的な感情ではなく、心や体、そして生き方全体に影響を与える、複雑で長く続くプロセスです。

そして、「グリーフケア」とは、この悲しみを抱える人々を支える様々な活動のこと。
「遺族ケア」や「悲嘆ケア」とも呼ばれます。
グリーフケアの目的は、悲しみを無理やりなくすことではありません。
悲しみを抱える人が、自分の気持ちと向き合い、受け入れながら、少しずつ前に進んでいけるようにサポートすることです。

なぜ今、日本でグリーフケアが必要とされているのでしょうか?

現代の日本社会は、高齢化が進み、多くの方が大切な人との別れを経験するようになっています。
また、核家族化が進み、地域社会のつながりも希薄になっているため、悲しみを分かち合える人が身近にいないと感じる方も増えています。
さらに、災害やパンデミックといった予期せぬ出来事は、私たちの日常を大きく変え、深い心の傷を残すことがあります。
このような社会の変化の中で、誰にも相談できず、一人で悲しみを抱え込んでしまう人が増えているのです。だからこそ、今、日本社会全体でグリーフケアの必要性が高まっているのです。

悲しみを抱え込むとどうなる?

もし、悲しみを一人で抱え込み、誰にも相談できない状態が続くと、心身に様々な影響が出てくる可能性があります。

  • 心の健康への影響 うつ病、不安障害、不眠症などを引き起こしたり、悪化させたりする可能性があります。また、「いつまでも悲しんでいるべきではない」といった周りの無理解から、さらに心を痛めてしまうこともあります。
  • 体の健康への影響 食欲不振や過食、不眠、頭痛、胃痛、免疫力の低下など、様々な体の不調が現れることがあります。
  • 社会的な影響 周囲との交流を避け、孤立してしまうことがあります。また、仕事や日常生活に支障が出てしまうこともあります。

どんなサポートがあるの?~日本のグリーフケアの現状

日本では、様々な形でグリーフケアが行われています。

  • 専門家によるサポート 病院のカウンセラーや精神科医、専門のグリーフカウンセラーなどが、個別の相談やカウンセリングを行っています。
  • 同じ経験を持つ仲間との分かち合い 遺族会や当事者グループでは、同じような経験をした人々が集まり、互いに気持ちを分かち合い、支え合っています。
  • 地域社会のサポート 地域によっては、自治体やNPOなどが相談窓口を設けたり、情報提供を行ったりしています。お寺や神社などが、心のよりどころとなるような活動をしている場合もあります。
  • インターネットやテクノロジーの活用 グリーフに関する情報を提供するウェブサイトや、オンラインでのサポートグループなども増えています。

サポートを受ける上での課題

しかし、グリーフケアを受けたいと思っても、様々な課題があります。

  • 専門家の不足 専門的な知識や経験を持つ人材が不足しています。
  • 周りの理解不足 「いつまでも悲しんでいるべきではない」といった誤解や偏見が、相談しにくい状況を生んでいます。
  • 費用負担 専門家によるカウンセリングなどは、費用がかかる場合があります。
  • 情報へのアクセス どこに相談すれば良いのか分からないという方もいます。

誰もが安心して悲しみを乗り越えられる社会へ

グリーフケアは、決して特別なことではありません。
誰もが経験する可能性のある悲しみに、社会全体で寄り添い、支え合うための大切な取り組みです。

私たちは、誰もが安心して悲しみを乗り越え、再び前向きに生きていける社会を目指して、グリーフケアの必要性を広め、より良いサポート体制を築いていく必要があります。

もしあなたが今、深い悲しみを抱え、誰かに話を聞いてほしいと感じているなら、一人で悩まず、身近な信頼できる人に相談してみてください。
あなたの気持ちを受け止め、共に歩んでいく人が必ずいます。