Date:2024.11.11

小学生に伝える、介護保険制度

みんな、おじいちゃんやおばあちゃんのことは大好きだよね。いつも優しくて、いろいろなことを教えてくれる大切な家族です。

でも、人が年をとると、若いころには簡単にできたことが、少し難しくなることがあります。たとえば、靴のひもを結んだり、高いところにある物を取ったりするのに、ちょっとお手伝いが必要になることがあるかもしれません。

日本には、おじいちゃんやおばあちゃんが、もし体の具合で助けが必要になったとしても、元気に安心して暮らせるように、みんなで助け合うための特別な「やくそく」があります。この大切なくらしを支える仕組みのことを「介護保険(かいごほけん)」といいます。

このレポートでは、この「介護保険」という仕組みについて、小学生のみんなにもわかるように、やさしい言葉で説明していきます。

1. 介護保険ってなんだろう?

介護保険というのは、日本に住んでいるみんなで力を合わせて、お年寄り(おじいちゃんやおばあちゃんのことだね)や、特別な病気で助けが必要になった少し年上の大人(40歳以上の人)が、毎日の生活で困ったときに助けを受けられるようにする、大きなチームのような仕組みです。もしものときに、みんなを守ってくれる安全ネットのようなもの、と考えてもいいかもしれません。

この介護保険の一番大切な目的は、お年寄りが「元気に安心してくらせるように」すること、そして「自分でできることは自分でするのを応援する」ことです。ただお世話をするだけじゃなくて、お年寄りの方が自分でできることは、できるだけ自分でやってもらうように、そっと応援することも大切なんだ。

また、介護をしている家族(たとえば、お父さんやお母さん)が、大変になりすぎないように助けることも、大切な目的の一つです。家族だけで抱え込まずに、みんなで支えあう、という考え方が基本になっています。

この介護保険の仕組みは、2000年に始まりました。日本でお年寄りが増えてきて、家族だけでは介護をするのが難しくなってきたことから、「みんなで助けあう仕組みが必要だ」と考えて作られた、わりと新しい制度なのです。

2. どうして介護保険が必要なの?

では、どうしてこのような介護保険の仕組みが必要になったのでしょうか? それにはいくつかの理由があります。

まず、今の日本には、元気で長生きするおじいちゃんやおばあちゃんがたくさんいます。これはとても素晴らしいことですが、同時にお手伝いが必要になる人も増える可能性がある、ということです。昔と比べて、お年寄りの割合がとても増えているのです。

次に、昔は、おじいちゃんやおばあちゃん、お父さんやお母さん、そして子どもたちが一緒に大きな家族で住んでいることが多くありました。そうすると、家族の中で自然にお年寄りの手助けができました。でも今は、お父さん、お母さん、子どもたちだけの家族(これを「核家族(かくかぞく)」といいます)が増えたり、お父さんもお母さんもお仕事で忙しかったりして、家でずっと介護をするのが難しくなってきています。

お年寄りになると、たとえばこんなことでお手伝いが必要になることがあります。

  • 立ち上がったり、歩いたりするのが少し大変になる。
  • お風呂に入ったり、服を着たりするのに手伝いが必要になる。
  • ごはんを作ったり、お掃除をしたりするのが難しくなる。
  • ときどき、大切なことを忘れてしまうことがある(これは「認知症(にんちしょう)」といいます。大切なことを忘れてしまうことがある病気のことだよ)。
  • 転んでしまって、骨を折ってしまうこともあるかもしれません。

こういったお手伝いを、家族だけで毎日続けるのは、とても大変なことです。介護のために、お仕事を辞めなければならない人もいます。介護保険があると、専門の人がお手伝いに来てくれたり、短い間だけ施設に泊まれたりする(ショートステイ)ので、家族は少し休むことができます。家族だけで全部やらなくてもよくなり、心配も少し軽くなります。

このように、お年寄りが増えていること、家族の形が変わってきたこと、そして介護をする家族の負担を軽くする必要があることから、介護保険というみんなで支える仕組みがとても大切になっているのです。

3. 介護保険のお金はどこから?

介護保険のサービスを使うためには、たくさんのお金がかかります。そのお金は、いったいどこから来ているのでしょうか?

これは、国全体の大きな貯金箱のようなものを想像するとわかりやすいかもしれません。クラスで何かをするときに、みんなでお金を集めるのに似ています。

日本では、40歳になった大人は、みんなこの大きな貯金箱に、毎月少しずつお金を入れるルールになっています。このお金を「保険料(ほけんりょう)」といいます。40歳以上の人は、今、介護が必要なくても、将来自分や他の人が困ったときに助け合えるように、必ずこの保険料を払うことになっています。これは、大人になったら、ずっとみんなで支え合うために払うお金だよ。

みんなから集めたこの保険料で、介護にかかる費用の約半分をまかないます。では、残りの半分はどこから来るのでしょうか? それは、みんなが国や都道府県、市町村に納めている「税金(ぜいきん)」から出されています。税金は、学校や道路、公園を作ったり、警察や消防のために使われたりするお金ですが、介護保険を支えるためにも使われているのです。

このように、介護保険は、40歳以上の大人が払う「保険料」と、みんなが納める「税金」の二つのお金で成り立っています。

どうして保険料を払う必要があるのでしょうか? それは、みんなで助け合うためです。たくさんの人が少しずつお金を出し合うことで、いざ介護が必要になった人が、少ない負担でサービスを受けられるようにするためです。

実際に介護サービスを使うとき、利用する人は、かかった費用の全部を払うわけではありません。ほとんどの場合、かかった費用の1割(10分の1)だけを自分で払います(これを「1割負担(いちわりふたん)」といいます。10回サービスを使ったら、1回分だけ自分で払うんだ)。ただし、お年寄りでもたくさん収入がある人は、2割や3割を負担することもあります。残りの9割(または8割、7割)は、みんなで集めた保険料や税金が入っている大きな貯金箱から支払われるのです。

この仕組みがあるから、もし介護が必要になっても、お金の心配を少し減らして、必要な助けを受けやすくなるのです。これは、若い世代がお年寄りを支え、そして今の若い世代が将来お年寄りになったときには、その時の若い世代に支えてもらう、という世代を超えた助け合いの考え方にもつながっています。

4. どんなお手伝いが受けられるの?

介護保険を使うと、具体的にどんなお手伝い(サービス)を受けられるのでしょうか? 介護保険のサービスには、その人の体の状態や、どんなことで困っているかに合わせて、たくさんの種類があります。

大きく分けると、以下のようなサービスがあります。

  • お家でのお手伝い(居宅サービス – きょたくサービス): ヘルパーさんがお家に来てくれて、ごはんを作ったり、お部屋の掃除や洗濯をしたり、買い物を手伝ってくれたりします。お風呂に入るのを手伝ったり、着替えを手伝ったりもしてくれます。また、看護師さんがお家に来て健康状態をチェックしてくれたり(訪問看護 – ほうもんかんご)、お家でリハビリ(体を動かす練習)を手伝ってくれたりもします。

  • みんなと過ごす場所(通所サービス – つうしょサービス): 昼間に、デイサービスセンターやデイケアセンターという特別な場所へ通って、サービスを受けることもできます。そこでは、体操をしたり、ゲームをしたり、他のお年寄りと一緒におしゃべりを楽しんだりできます。お昼ごはんを食べたり、お風呂に入ったりすることもできます。送迎バスがあることが多いので、家族が送り迎えをしなくても大丈夫な場合が多いです。

  • ちょっとお泊り(短期入所サービス – たんきにゅうしょサービス / ショートステイ): 介護をしている家族が、病気になったり、旅行などで数日間家を空けたりするとき、または少し休みたいときに、お年寄りが短い期間だけ特別な施設に泊まることができます。そこでは、食事や入浴のお手伝いなど、必要なケアを受けられます。

  • 便利な道具(福祉用具 – ふくしようぐ): 生活を楽にするための便利な道具を借りたり、買うときに少しお金を助けてもらったりできます。たとえば、歩くのを助ける杖(つえ)や歩行器(ほこうき)、車いす、起き上がりやすい特別なベッドなどを借りることができます。お風呂で使う特別なイスや、持ち運びできるトイレ(ポータブルトイレ)などを買うときには、費用の一部を助けてもらえます。

  • ずっと住む場所(施設サービス – しせつサービス): お家での生活が難しくなり、いつも介護が必要な人のためには、介護を受けながら生活できる特別なホーム(施設)があります。そこでは、24時間体制で専門のスタッフがお世話をしてくれます。

  • 近所での助け合い(地域密着型サービス – ちいきみっちゃくがたサービス): 住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるように、その地域に合わせた、もっと身近なサービスもあります。たとえば、少人数で一緒に生活するグループホームや、夜中でも対応してくれる訪問サービスなどがあります。

このように、たくさんの種類のサービスがあることで、一人ひとりの状況に合わせて、できるだけ自分の家や地域で生活を続けられるように支えています。