Date:2024.04.13

第9期北海道高齢者保健福祉計画・介護保険事業支援計画について

北海道では、高齢者の皆様が住み慣れた地域で健やかに安心して暮らせる社会を目指し、3年ごとに「北海道高齢者保健福祉計画・介護保険事業支援計画」を策定しています。この度、令和6年度(2024年度)から令和8年度(2026年度)までを期間とする「第9期計画」が始まりました。この計画は、北海道全体の高齢者支援の方向性を示す、非常に重要な指針となります。

この度、北海道の計画が、私たち釧路市民の生活にどのように関わってくるのかをわかりやすく解説するレポートを作成しました。釧路市においても、北海道の計画と連携し、地域の実情に合わせた「第9期 釧路市高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画(2024~2026)」が策定されており、本レポートでは両方の計画の内容を踏まえ、特に市民生活に関連の深い情報をお届けします。

釧路市の高齢化の現状 地域の現状

私たちのまち、釧路市の高齢化の現状を見てみましょう。釧路市の65歳以上の高齢者人口は、2020年をピークに緩やかな減少傾向にありますが、75歳以上の後期高齢者人口は2030年頃まで、さらに85歳以上の超高齢者人口は2040年頃まで増加し続けると予測されています。総人口が減少する中で高齢者の割合(高齢化率)は上昇を続け、特に後期高齢者の割合は今後も高まっていく見込みです。それに伴い、介護や支援を必要とする方(要支援・要介護認定者)の数も増加傾向にあります。

具体的な数値を見てみましょう。釧路市の高齢化率は、2023年の実績値で35.4%でしたが、2026年の推計値では36.7%、そして2040年の推計値では42.6%にまで上昇する見込みです。後期高齢化率(75歳以上人口割合)も同様に、2023年の18.9%から2026年には21.6%、2040年には26.1%へと増加すると予測されています。特に85歳以上の人口割合は、2023年の6.4%から2026年には7.1%、2040年には12.9%と大幅な増加が見込まれています。また、要支援・要介護認定率(対第1号被保険者)も、2023年の23.1%から2026年には24.2%、2040年には30.4%に上昇する見込みです。

これらのデータからわかる重要な点は、釧路市が直面している特有の状況です。市全体の人口は減少しているにも関わらず、特に介護を必要とする可能性が高い75歳以上、とりわけ85歳以上の人口は今後も増え続けるという点です。これは、地域全体で高齢者を支える若い世代(生産年齢人口)が相対的に少なくなる中で、介護サービスや医療、地域社会への負担が集中しやすくなることを意味します。単なる高齢化ではなく、人口減少下での急速な「超高齢化」への対応が、釧路市の大きな課題となっています。

このレポートでは、北海道と釧路市の公式な計画書の内容を、市民の皆様にとって身近で理解しやすい言葉で解説することを目的としています。これらの計画が、釧路市における高齢者の皆様やそのご家族の日常生活、利用できるサービス、地域での支え合いに、具体的にどのように影響するのかをお伝えします。

北海道が目指す高齢者支援の姿 みんなで支え合う社会へ

第9期北海道計画が掲げる基本的な考え方は、「道民みんなで支え合う、明るく活力に満ちた高齢社会づくり」です。これは、行政サービスだけでなく、地域住民、NPO、企業など、社会全体で高齢者の暮らしを支え、高齢者自身も生きがいを持って活躍できるような、前向きな社会を目指すという意志の表れです。

この理念は、釧路市が掲げる「みんなが『いきいき』と、『健やかに』、『安心』して暮らせるまちを、みんなで育て、みんなで支え合うまち」という基本理念とも深く共鳴しています。北海道全体の方向性と、釧路市の目指す姿が、共通の価値観に基づいていることがわかります。

今回の計画期間(2024~2026年度)は、日本の人口構成において大きな節目となる時期です。いわゆる「団塊の世代」が全員75歳以上となり、医療や介護の需要がさらに高まると予想されています。さらに、計画は2040年という将来も見据えています。この頃には北海道全体の高齢者人口がピークを迎え、特に85歳以上の人口が大幅に増加する一方で、社会を支える生産年齢人口は急激に減少すると予測されています。北海道全体の高齢化率は、2020年の31.8%から、2040年には39.7%(または別の推計では40.9%)に達すると見込まれています。

また、平均寿命が延びる一方で、健康上の問題なく日常生活を送れる期間、いわゆる「健康寿命」との差が依然として大きいことも課題です。北海道では、2019年時点で、男性で約9.2年、女性で約12.1年の差があります。この期間をいかに短縮し、長く元気に暮らせるようにするかが重要です。

これらの状況を踏まえ、第9期計画は、単に現在の課題に対応するだけでなく、将来の人口動態や介護ニーズの変化を予測し、先手を打って備えることを意図しています。特に、介護サービス基盤の整備、介護を担う人材の確保、そして健康寿命を延ばすための介護予防といった取り組みに力を入れることで、将来にわたって持続可能な高齢者支援体制を構築しようとしています。これは、将来予測されるサービス需要の増大や担い手不足といった課題に対して、事前に対応能力を高めておくという、計画的なアプローチの表れと言えるでしょう。

北海道計画の主な目標(2024-2026年度)

北海道計画では、目指す社会の実現に向けて、以下の8つの主要な取り組みの柱(基本目標)を定めています。これらは、北海道全体の市町村が連携して進めるべき方向性を示しており、釧路市の取り組みもこれに基づいています。

  1. 地域包括ケアシステム構築のための地域づくりと地域ケア会議の推進: 高齢者が住み慣れた地域で必要な支援を受けながら暮らし続けられる体制(地域包括ケアシステム)を強化します。
  2. 生活支援体制整備の推進: 配食や見守りなど、在宅での生活を支える多様なサービスを充実させます。
  3. 自立支援、介護予防・重度化防止の推進: 高齢者ができる限り自立した生活を送れるよう支援し、介護が必要な状態になることを防ぎ、また状態が悪化しないように取り組みます。
  4. 医療・介護連携の充実: 医療機関と介護サービス事業所などがスムーズに連携し、一体的なサービスを提供できるようにします。
  5. 認知症施策の推進: 認知症になっても安心して暮らせる地域づくりと、認知症の予防に取り組みます。
  6. 介護人材の養成・確保: 介護サービスの担い手となる人材を育て、確保し、働き続けられる環境を整えます。
  7. 安全・安心な暮らしの確保: 高齢者の権利を守り、虐待を防止し、災害時などの安全を確保します。
  8. 介護保険制度の適切な運営: 介護保険サービスが質高く、効率的かつ公平に提供されるように制度を運営します。

釧路市の計画も、これらの北海道全体の目標に沿って、地域の実情に合わせた具体的な取り組みを進めることとしています。例えば、北海道の目標である「地域包括ケアシステムの構築」に対して、釧路市では地域包括支援センターの機能強化や医療・介護連携の推進策を具体化しています。また、「介護人材の養成・確保」という目標に対しては、市独自の資格取得支援や職場環境改善の取り組みを進めています。このように、北海道全体の大きな方針と、釧路市の具体的な行動計画が連動しているのです。

計画が釧路市の暮らしにどう影響するか 主な重点分野

北海道計画の8つの目標は、釧路市での具体的な取り組みを通じて、市民の皆様の生活に直接関わってきます。ここでは、特に影響が大きいと考えられる分野について、釧路市の現状と計画されている取り組みを詳しく見ていきましょう。

4.1 住み慣れた地域で安心して暮らすために:「地域包括ケアシステム」の深化

北海道の目標1である「地域包括ケアシステム構築のための地域づくりと地域ケア会議の推進」に基づき、釧路市では高齢者が要介護状態になっても、可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けられるよう、医療、介護、介護予防、住まい、生活支援サービスを一体的に提供する体制(地域包括ケアシステム)を強化します。釧路市では、市内をいくつかの「日常生活圏域」に分け、それぞれの地域に「地域包括支援センター」を設置し、このシステムの中心的な役割を担っています。

地域包括支援センターは、高齢者やその家族からの様々な相談に対応する重要な拠点です。しかし、今後さらに増加・複雑化するニーズに応えるためには、センターの相談対応能力の向上や、地域の医療機関、介護事業者、民生委員など、関係機関との連携を一層強化していく必要があります。

釧路市では、地域包括支援センターの機能強化を図り、総合相談窓口としての機能を高め、多様な相談に的確に対応できるよう努めます。また、医療と介護の連携を推進するため、医療機関と介護サービス事業所間の情報共有を円滑にする「釧路市つながり手帳」の活用を促進します。さらに、関係機関とのネットワークを強化し、在宅医療や看取りに関する相談支援体制も整備します。ケアマネジャーだけでは解決が難しい個別のケースについては、医師、看護師、リハビリ専門職、民生委員など多職種が集まり支援方針を検討する「地域ケア会議」を開催し、個別課題の解決と地域課題の発見に繋げます。

この地域包括ケアシステムの成功は、単にサービスが用意されていること以上に、それらがどれだけスムーズに連携し、情報を共有し、一人の高齢者のために「チーム」として機能できるかにかかっています。例えば、病院を退院して自宅での介護が必要になった際に、病院の担当者とケアマネジャー、訪問看護師、かかりつけ医などが「つながり手帳」などを活用して迅速に情報を共有し、切れ目のない支援計画を立てられるかどうかが重要になります。このような連携体制の確立が、地域で安心して暮らし続けるための鍵となります。

4.2 元気に、自分らしく:介護予防と健康づくり

北海道の目標3「自立支援、介護予防・重度化防止の推進」と目標2「生活支援体制整備の推進」に関連して、釧路市では高齢者ができるだけ介護が必要な状態にならず、自立した生活を長く続けられるように支援する「介護予防」を推進します。これには、健康維持のための運動や栄養指導、社会的な交流の促進などが含まれます。

釧路市では、平均寿命と健康寿命の間にまだ開きがあり、要支援・要介護認定を受ける人の割合も増加傾向にあります。介護が必要な状態になるのを少しでも遅らせ、また、介護が必要になっても状態が悪化しないようにすることは、ご本人の生活の質(QOL)を高めるだけでなく、将来的な介護費用の抑制にも繋がる重要な課題です。

釧路市では、多様な介護予防プログラムを推進します。具体的には、専門職が自宅を訪問して指導するサービス、デイサービスのような通所型サービス、地域住民が主体となって運営する「通いの場」、短期間で集中的に行う予防プログラムなど、多様な選択肢を提供します。また、生活習慣病の予防など、市の健康増進事業と連携し、介護予防につなげます。高齢者が地域活動や趣味などを通じて社会とのつながりを持ち、生きがいを感じられるような機会づくりも支援します。さらに、「高齢者外出促進バス事業(おでかけパスポート70)」を実施し、高齢者の積極的な外出と社会参加を後押しします。地域の拠点である老人福祉センターなどを活用し、介護予防教室なども開催されます。

これらの取り組みは、単に身体機能の維持・向上を目指すだけでなく、高齢者が社会的に孤立することを防ぐという側面も持っています。地域住民が主体となって運営する「通いの場」への参加や、バスパスを利用した外出は、人との交流を生み、精神的な健康を保つ上でも大きな意味を持ちます。社会とのつながりを保つことが、結果として心身の健康維持、ひいては介護予防に繋がるという考え方が、計画の根底に流れています。

4.3 認知症になっても安心して暮らせるまちへ:認知症施策の推進

北海道の目標5「認知症施策の推進」と、国の認知症基本法を背景に、釧路市では認知症の人やその家族が、地域の中で尊厳を保ち、希望を持って暮らしていけるような支援体制を整えます。これには、正しい理解の普及、早期発見・早期対応、適切な医療・介護サービスの提供、家族支援、見守り体制などが含まれます。釧路市でも、北海道全体と同様に認知症の人の増加が見込まれており、近年、釧路市における日常生活に支障をきたすような症状が見られる認知症高齢者は、約7,000人前後で推移しています。認知症と診断されても地域で安心して生活を続けるためには、早期に相談・支援につながる体制や、介護する家族へのサポートが不可欠です。

釧路市では、認知症について正しく理解し、支援者となる「認知症サポーター」の養成講座や、市民向けの認知症講座を開催し、理解と周知を促進します。また、認知症の状態に応じた適切なサービスや相談先を示す「認知症ケアパス」の活用を推進します。早期発見・早期対応のため、専門職チームが早期に相談・支援を行う「認知症初期集中支援チーム」の活動や、「脳の健康度テスト」、タブレットを用いた「ものわすれ相談プログラム」などを実施します。認知症の本人が自らの意思を表明し、希望する社会参加ができるような支援も行います。介護者の負担軽減を図るため、「家族介護者交流事業」や「家族介護教室」、気軽に集える「認知症カフェ」、若年性認知症の人と家族のつどいなどを継続的に実施し、孤立を防ぎます。安全確保のため、行方不明になる恐れのある高齢者等の情報を事前に登録し、早期発見・保護につなげる「釧路市SOSネットワークシステム」の機能を強化し、模擬訓練も継続します。「認知症地域支援推進員」を中心に、医療機関、介護事業所、地域住民などが連携するネットワークも強化します。

近年の認知症施策は、単に「介護」を提供するだけでなく、認知症と共に地域で「共生」していくことを目指す方向にシフトしています。釧路市の取り組みにも、この考え方が反映されています。認知症サポーター養成による地域住民の理解促進、本人の意思を尊重した社会参加支援、SOSネットワークのような地域全体での見守り体制などは、認知症の人を特別な存在として隔離するのではなく、地域の一員として、その人らしく安全に暮らしていける社会を築こうとする姿勢の表れです。

4.4 必要な時に必要なサービスを:介護サービス基盤と人材の確保

北海道の目標6「介護人材の養成・確保」と目標1「地域包括ケアシステム構築(施設整備)」に関連して、釧路市では増加する介護ニーズに応えるため、特別養護老人ホームなどの施設サービスや、ホームヘルプ、デイサービスといった在宅サービスを、必要な量だけ整備します。そして、それらのサービスを提供するために不可欠な介護職員を十分に確保し、定着を促します。高齢化の進展に伴い、釧路市でも介護サービスの需要は今後も増加が見込まれており、これに対応するため、計画的にサービス提供体制を拡充する必要があります。しかし、全国的な課題でもある介護人材の不足は釧路市にとっても深刻であり、サービスの担い手をいかに確保・育成していくかが、計画達成の鍵を握っています。

釧路市では、第9期計画期間中(2024~2026年度)に、以下の介護サービス基盤の整備・拡充を予定しています。特別養護老人ホーム(特養)は8床増床、介護付き有料老人ホームは3施設で165人分が新設されます。認知症対応型共同生活介護(グループホーム)は1施設で18名分が新設され、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は1事業所新設、看護小規模多機能型居宅介護は2事業所新設(うち1事業所は転換)されます。

また、介護人材確保のため、民間の人材紹介会社の活用や、外国人材の受け入れ支援、介護の資格取得にかかる費用の助成などを継続・拡充します。介護現場の離職状況や事業所の課題を把握し、他都市の事例も参考にしながら、より効果的な人材確保・定着策を検討します。介護の仕事の魅力発信や、多様な背景を持つ人々が介護分野で働きやすい環境づくりも検討されます。職場環境の改善として、国の処遇改善加算の取得を促進し賃金アップを支援するほか、介護ロボットやICT(情報通信技術)の導入支援、事務作業などを補助する「介護助手」の活用促進、書類作成負担の軽減などを進めます。

これらの計画は、施設やサービスの「ハコモノ」を増やすだけでなく、そこで働く「人」を確保することがいかに重要であるかを明確に示しています。特に、人材確保策として、採用支援から定着支援、さらには処遇改善やICT導入による負担軽減まで、多角的なアプローチを取ろうとしている点は注目に値します。計画された施設整備が実効性を持つためには、これらの人材確保・定着策が着実に実行され、介護職が魅力ある仕事として認識されるようになることが不可欠です。

4.5 いつまでも安全・安心な暮らしを:権利擁護と備え

北海道の目標7「安全・安心な暮らしの確保」に基づき、釧路市では高齢者を虐待や詐欺などの権利侵害から守り、成年後見制度などの利用を支援します。また、自然災害や感染症の発生といった緊急時にも、高齢者の安全が守られるように備えます。一人暮らしの高齢者や、認知症などにより判断能力が低下した高齢者が増える中で、悪質な消費者被害に遭ったり、虐待を受けたりするリスクも高まります。また、災害時に自力で避難することが難しい方への支援体制や、介護施設等での感染症対策も重要な課題です。

釧路市では、判断能力が不十分な方の財産管理や身上保護を行う「成年後見制度」の利用促進や相談体制を強化し、権利擁護を推進します。また、高齢者虐待の早期発見・防止のための相談・対応体制を推進します。災害への備えとして、災害時に支援が必要な方(避難行動要支援者)の名簿を整備し、個別の避難支援計画の作成を進める「避難行動要支援者避難支援事業」を推進します。感染症対策を強化するため、介護施設等における平時からの感染予防策の徹底や、感染症発生時の業務継続計画(BCP)策定などを支援し、対応力を強化します。地域での見守りとして、民生委員や地域住民、関係機関が連携する「地域安心ネットワーク」を推進し、日常的な見守りや緊急時の対応体制を強化します。SOSネットワークもこの一環です。

これらの取り組みは、介護サービスの提供だけでなく、高齢者が地域で生活する上での様々なリスクに目を向け、事前に対策を講じようとする姿勢を示しています。特に、災害時の「個別避難計画」の作成支援や、施設における感染症発生時の「業務継続計画」策定支援などは、単に問題が起きてから対応するのではなく、予めリスクを想定し、具体的な対応策を準備しておく「プロアクティブ(事前対応型)なリスクマネジメント」への移行を意味しており、地域全体の安全性を高める上で重要です。

暮らしを支える仕組み 釧路市の介護保険制度について

これまで見てきた様々な高齢者支援サービス(訪問介護、デイサービス、施設入所など)の多くは、「介護保険制度」によって財源が支えられています。北海道や釧路市の計画は、これらのサービスをどの程度、どのように提供していくかを定め、そのために必要な費用を見積もるものです。そして、その費用の一部を賄うのが、皆様が納める介護保険料です。

第9期計画期間(2024~2026年度)における、釧路市の65歳以上の方(第1号被保険者)の介護保険料の基準額(標準的な所得の方の額)は、月額5,530円(年額66,360円)です。注目すべき点として、この金額は、前期(第8期計画期間)の月額5,650円から、月額120円(年額1,440円)引き下げられています。本来、高齢化によるサービス利用量の増加や介護報酬の改定により、保険料は上がる見込みでしたが、釧路市では、これまで積み立ててきた「介護給付費準備基金」から12億円を取り崩し、保険料の軽減に充てることを決定しました。これにより、市民の皆様の負担増を抑えることができました。実際の保険料は、ご本人の所得などに応じて14段階に細かく設定されており、低所得の方への負担が重くなりすぎないよう配慮されています。病気や失業など、特別な事情により保険料の納付が難しい場合には、納付の猶予や減免を受けられる制度がありますので、市役所の担当窓口にご相談ください。

介護保険制度を持続可能なものとしていくためには、限りある財源の中で、サービスが本当に必要な人に、適切な内容と量で提供されることが重要です。これを「介護給付適正化」といいます。北海道計画では、全ての市町村が、ケアプランの内容が適切か点検したり、医療情報と介護給付の情報を照合して不正な請求がないか確認したりするなどの取り組み(要介護認定の適正化、ケアプラン点検、医療情報との突合・縦覧点検など)を確実に実施することを目標としています。これは、保険制度全体の健全性を保ち、将来にわたって必要なサービスを提供し続けるために不可欠な取り組みです。

釧路市が今回、準備基金を活用して保険料を引き下げたことは、市民負担の軽減という点で非常に大きな決断でした。しかし、これは一時的な措置であり、基金は無限ではありません。今後も増え続ける介護ニーズと、それに伴う費用増という根本的な課題は残ります。だからこそ、サービスの「適正化」を進め、無駄をなくし、効率的な制度運営を図ることが、将来の保険料負担を抑制し、制度を持続させていく上で、ますます重要になってくるのです。

まとめ この計画が釧路市の未来にもたらすもの

このレポートで見てきたように、第9期北海道高齢者保健福祉計画・介護保険事業支援計画、そしてそれと連携する釧路市の計画は、今後3年間の高齢者支援の方向性を定める重要なものです。主なポイントをまとめます。

釧路市は、人口減少と超高齢化が同時に進むという状況を踏まえ、高齢者が地域で安心して自分らしく暮らし続けられるまちづくりを計画的に進めています。医療・介護・地域が連携する「地域包括ケアシステム」の強化、元気なうちから取り組む「介護予防」、そして「認知症」への理解と支援に力が入れられています。必要な介護サービスを提供するための基盤整備と、それを支える「介護人材」の確保・育成・定着が、最重要課題の一つとして位置づけられています。市民の負担を考慮し、介護保険料は今回引き下げられましたが、制度を持続させるためには、サービスの適切な利用と効率的な運営が今後も求められます。

計画の基本理念である「みんなで支え合う」という言葉が示すように、行政や専門職だけの力で、これからの高齢社会を支えていくことは困難です。地域住民一人ひとりの理解と協力が不可欠になります。例えば、近所での声かけや見守り、地域の介護予防活動やサロンへの参加・協力、認知症サポーターとして活動することなど、私たち一人ひとりができることはたくさんあります。こうした地域での支え合いの輪が広がることが、計画の目標達成、そして誰もが安心して暮らせる温かい地域社会の実現に繋がります。

この計画は、釧路市が直面する人口構造の変化に対応し、「明るく活力に満ちた高齢社会」を築くための重要な一歩です。計画に盛り込まれた様々な取り組みが着実に実行され、効果を発揮していくことが期待されます。しかし、社会状況は常に変化します。この計画も、3年後(2026年度)には見直しが行われ、次の計画が策定されます。行政、サービス事業者、そして市民が一体となって、現状の課題を共有し、より良い未来のために知恵を出し合い、協力していくことが、これからも求められます。

このレポートが、釧路市民の皆様にとって、ご自身の暮らしや地域のことについて考え、行動するきっかけとなれば幸いです。

引用文献

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